藤沢駅前 ダイヤモンドビル地下 中華の古久屋のあんかけ五目焼きそば。
先週、3年前まで実家のあった藤沢に急遽赴く必要がありました。人の命に係わる事柄について幾つか決断しなければならないことがあり、何日か掛けて病院の医師やケアマネージャーとやり取りをしました。
私には4つ年上の兄が居るのですが、折悪しく彼は臓器不全で入院中だと言うことで、私が独りで人の命に係わる決断をしなければなりません。独りで責任を背負い込むとメンタルに響くので、なるべく鈍感力を発揮しようと思います。
藤沢駅前にダイヤモンドビルと言うとっても古い商業ビルがあり、その地下に同じくとっても古い町中華の有名店があります。古久屋といいます。古いので飴色に染まってボロボロで、今にも倒壊しそうな店構えです。
昭和様式美のような町中華の品々を出す不思議なお店です。今回、決して楽しくない用件で藤沢を訪れたのですが、時間調整も兼ねて、10年ぶり位で古久屋で中華を食べました。当店の名物料理、あんかけ五目焼きそば990円です。
何とも面妖な料理で、あんかけ焼きそばにエビ天ぷらが乗っています。具材も、様々な具材が一人ずつ順番に顔見世をしているような塩梅で、律儀に各具材が一寸だけしか乗っていません。個々の具材は成程美味しいのですが、具材の量がケチ臭くて、頼んでないのに倹約家の心得を延々と説教されたような不快感を覚えます。
畢竟、様々な食材が何れも高級品だった昔の流儀を律儀に守って、料理を盛り付けているのでしょう。今風の盛り付けならば、もっと豪勢に具材を乗せる筈です。
価格は990円なのですからコスト的にも豪勢に具材を乗せることは出来る筈で、若い世代の皆さんは、敢えて古い商業ビルの薄暗い地下にある、店構えから働く店員まで何もかもが古ぼけたこのお店にワザワザ来店して、この割高な町中華を食べたいとは思わないでしょう。私だって、初見でこの店に入るのは絶対に嫌です。
要するに、時代から取り残された当店を愛でるような、懐古趣味的な心持ちの馴染み客だけが訪れるお店です。当然ながら、顧客の年齢層も60歳代以上の方ばかりとお見受けしました。
一寸話は脱線しますが、1970年代の子供時代を藤沢市で過ごした私は、多くの飲食店で感じる事大主義的な偉そうな対応、北口に色街があった名残なのか拭っても拭い切れないヤクザ者の不潔な残り香のようなものを、この街で幾度となく感じていました。従って、子供の頃の私は、この藤沢駅周辺が大嫌いでした。今でも私は藤沢駅周辺が大嫌いです。
そんな私が、敢えて自宅から電車で2時間掛けて藤沢を訪れる理由も、近々無くなりそうです。このお店が入っているダイヤモンドビルも、もう直ぐ再開発で取り壊されるそうです。
私は、これら2つの背景に殉じて、憂鬱なこの日の遅いお昼ご飯のためにこの店を敢えて選んだような気がします。2023/4/4