「太平洋戦争はなぜ負けたか」別宮暖郎著 日本が何故アメリカに負けたか、理由を科学的に教えてくれる名著。

私は大学で社会科学を専攻しました。簡単に言うと法・経・商と言う文系は大体が社会科学です。私は中でも組織学・社会学をもっぱら研究しました。文系ですから研究と偉そうに言っても当該分野の本を読んで若者同士がじゃれ合って議論するだけで、まあ20歳前後の若者を対象とした情操教育みたいなものです。

文系学生の皆さん、旧制高校の時代から文系大学ってのは情操教育の場だったのだから、頑張ってね。良い子になって下さい。










1984年に執筆された「失敗の本質」(野中郁次郎他の共同著作)という有名な本があります。これは、太平洋戦争に日本が負けた要因を複数の研究者たちが分析・検討して共同執筆した名著です。文系の大学出身でこの本を読んでいなかったら恥です。文系社会人の良い子の皆さん、今直ぐアマゾンで注文して読みましょう。834円(送料込み)らしいです。

但しこれを読んでいる癖に、社会(または会社)で卑しい行いをする恥ずべき文系社会人は沢山居ます。馬鹿に学問は無駄、ということが実証されましたね。

文系大学は上述の通り、戦前の旧制高校の時代から若者の情操教育の修練場だったんだけどね。今となっては、文系大学なんて税金の無駄(私立助成金を含む)だから廃校にすれば良い、と私は思います。











副題にある通り、この「失敗の本質」という本は、日本人の行動様式や組織に焦点をあてたもので、系譜としては往年に流行った「菊と刀」「縦社会の人間関係」「日本のムラ社会の研究」「In Search of Excellence」等の日本研究本に近いです。

従って著作者のメンバー構成も影響して内容はアカデミックで、この本は「日本は太平洋戦争になぜ負けたの?誰が悪かったの?」と言う大衆の素朴な疑問に、判りやすく答えるものではありません(そもそも焦点が違うので当たり前)。この類の勘違いは時間の無駄だから、本を選ぶ時は注意しましょう。

これに対して、「太平洋戦争はなぜ負けたか」別宮暖郎著 並木書房 定価1,600円 は、「日本は太平洋戦争になぜ負けたの?誰が悪かったの?」と言う大衆の素朴な疑問に、判りやすく答える名著作です。是非購入してお読み頂きたいのですが、要点は以下の通り(カッコ内は私の感想です)。

結論を言うと「日本は戦略が拙かったから太平洋戦争に負けた」のです。

1.太平洋戦争の日本兵士の死者数は213万人。悲惨極まりないことに、餓死者はこの内100万人以上。これは日本の作戦責任者だった参謀達が兵站を無視したことが原因(参謀達は明らかな殺人犯罪者&真の戦犯)。

2.太平洋に散在する島々に日本軍は基地や空港を作ったが、これらは戦略上の強みにはならず無駄。制海権を失った後、補給なしにこれらの島々に置き去りにされた日本兵士は、島毎に順番に米軍に殲滅された。

3.日本軍は中国戦線で中国軍(現台湾の国民党軍)に対して54勝1敗。日本は太平洋で米軍に負けたが、中国大陸では敗戦時までずっと中国軍に勝ち続けていた(「中国共産党が日本帝国から中国を解放した」という、現在の中国共産党政権の大嘘が私は嫌い)。

4.山本五十六(身長160㎝の小男)は、ハワイ奇襲に続いて日本海軍が勝ち続けて米軍の軍艦数を徐々に減らして行くだろう、すると米国民の厭戦感が高まって停戦に向かうだろう、と情緒的に願っていた。
馬鹿としか言いようがない(昭和天皇が山本を全く評価しなかったのは慧眼)。
5.ハワイ奇襲の戦果は米軍の旧式戦艦4艘の沈没だけ。不用品の廃棄物処理を手伝っただけのこと。
奇襲に引き続いてハワイ軍港を占領する、或いは燃料タンクや修理施設を完膚なきまでに破壊し尽くして米軍太平洋艦隊の最重要拠点を使えなくする等の計画なく、爆撃の後に日本軍はハワイを淡々と去って行った。
戦いの後に三々五々引き上げるという、日本軍の奇行は敗戦まで続く(芸能人の地方公演と同じ)。日本人は農耕民族的な精神構造なので、敵を一人残らず殺し続けるという残虐性に乏しいのでしょうね。

6.日本海軍は閲兵式のように、戦艦群・空母群がそれぞれ横一列に並んでしずしずと進んで行った。米海軍は、一番大切な空母を日本軍航空機による攻撃から守るため、巡洋艦その他が空母の周りをガッチリ円陣で囲み、空母同士は離れて進んで行った。日本軍の戦艦隊形では、大切な空母が横一列に密集しており、米軍航空機による攻撃からの守りが脆弱だった。
日本軍の戦艦隊形は空母の防御と離着陸に欠点があるのに、日本海軍は最後までこれを変えなかった(事実を見ない、机上演習優先の弊害)。

7.山本五十六は旗艦大和に乗って戦場の500Km後方で指揮を執り、戦艦による空母の防空サポートを怠った(山本は総力戦を避け、軍艦を小出しにする「勿体ないオバケ」)。

8.1942年時点で、米軍が太平洋で使えた空母はゼロ、日本軍は6隻。しかし日本軍は馬鹿丸出しで、1943年末まで上述の通り役に立たない太平洋の島々の日本軍基地への補給に終始し、米軍への攻撃を行わなかった。

米国がその凄まじい工業力を発揮して1943年末までに空母を7隻を再装備して、反攻開始するのを日本軍は待っていたとしか思えない間抜けぶり(全く何で1942年に、日本軍は攻めて行かなかったんだ!)。
そして1943年以降、物量差・戦艦の小出し・戦術の拙さにより、日本海軍は全ての海戦で負け続けた。

9.そもそも日本海軍には、米国を攻める長期戦略が無い。それも当然で、経済力も国土の広さも日米では比較にならない。太平洋戦争は元々日本が米国に勝つ可能性がゼロなので、太平洋戦争に負けた理由は日本がアメリカに対して戦争を始めたから、としか言いようがない。これが負けた理由の科学的説明ですな。

実際、この本の作者も、中盤から筆が個別の各論に迷い込み、困っている様子が伺える。
私も、このウェブサイトページの落とし前をどうつけるか、後日考えます。2022/11/24

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