私の好きな日本語 三島由紀夫 豊饒の海(一)春の雪

 「ねえ、飯沼。僕は今日ひとつ失敗をしたんだ。お父様にもお母さまにも内緒にしてくれれば教えて上げよう」

「何ですか」

「僕、今日、妃殿下のお裾を持ちながら、ちょっとつまずいてしまったんだ。妃殿下はにっこりして恕して下さったよ」

飯沼はその言葉の浮薄、その責任感の欠如、そのうるんだ目にうかぶ恍惚をことごとく憎んだ。










⇒貴顕の恍惚と庶民の冷淡の対比です。三島由紀夫の小説では、同様の対比によって登場人物間の信条・生まれ育ち・教養の差を際立たせて、後の展開の導入部とする手練手管が多用されます。こういった三島由紀夫の神経質かつ小賢しい描写表現が嫌いな人は多いと思います。私は好きです。

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